データ基盤クラウドコスト管理

従量課金クラウドの「想定外コスト」を防ぐ方法

従量課金クラウドの「想定外コスト」を防ぐ方法

使った分だけ払うクラウドは、小さく始められるのが魅力です。 その一方で、月末の請求額を見て驚いた、という声も絶えません。 従量課金の「想定外コスト」は、なぜ起きるのか。どうすれば防げるのかを整理します。

「伸縮できる」は「安い」ではない

従量課金のクラウドは、必要なときに必要なだけ計算資源を増やせます。 ただし、増やした分はそのまま請求されます。 ある企業は、データ基盤をクラウドに移した後の教訓として「伸縮できることは、安いことではない」 「管理を任せられることは、管理しなくてよいことではない」と振り返っています。

想定外のコストが生まれる理由は、大きく3つです。

  • 速さと費用が連動している:速くしようと計算資源を大きくすると、そのぶん単価も上がる
  • 誰が使ったかが見えにくい:部門や担当者ごとの使い方が分からず、気づいたときには膨らんでいる
  • 作り方と止め忘れで、何倍にもなる:同じ処理でも、書き方や設定しだいで費用が大きく変わる

まず知っておきたい:費用の大半は「計算」

データ基盤の費用は、データを保管する費用より、データを処理する「計算」の費用が大半を占めます。 ある企業の内訳の目安では、計算処理が全体の7〜9割、保管は1割前後でした。 AIの利用料は、現時点では数%にとどまるケースが多いものの、利用が広がるほど伸びていきます。

データ基盤の費用の内訳の目安。計算が70〜90%、保管が5〜15%、自動で動く処理が5〜10%、AIの利用料が1〜5% 費用の内訳の目安 ある企業の例・全体に占める割合 計算(データの処理) 70〜90% 保管(データの保存) 5〜15% 自動で動く処理 5〜10% AIの利用料 1〜5% 0%25%50%75%100%
費用の大半は「計算」。保管するデータを減らすより、計算の使い方を見直すほうが効く

つまり、コストを抑える近道は「保管するデータを減らす」ことより、「計算の使い方を見直す」ことです。 計算の費用は、ざっくり言えば「計算資源の大きさ × 動かした時間 × 回数」で決まります。 想定外のコストは、このどれかが想定より大きくなったときに生まれます。

計算の費用は、大きさ×時間×回数で決まる。それぞれの見直しポイント 計算の費用 = 大きさ 計算資源のサイズ × 見直しポイント 小さく始め、 遅ければ上げる 1段上げると 単価は約2倍 時間 動かしている時間 × 見直しポイント 使わない時間は 自動で止める 書き方を直して 処理を短くする 回数 処理が動く回数 見直しポイント 見られていない 画面を止める 同じ集計の 繰り返しを減らす
想定外のコストは、3つのどれかが想定より大きくなったときに生まれる

よくある5つの失敗

1. 書き方ひとつで、処理が何倍にもなる
ある物流会社では、AIを使ったデータ分析で約397ドル分を消費しましたが、そのうち222ドルは「SQLの書き方で防げた」ものでした。 ある半導体メーカーでは、プログラムで1件ずつ処理する作りにしたところ、費用が見積の10倍以上に膨らみました。 まとめて処理する書き方に直すと、30分以上かかっていた処理が1分未満になっています。

2. 大きすぎる計算資源を、動かしっぱなしにする
計算資源のサイズを1段上げると、時間あたりの単価はおよそ2倍になるのが一般的です。 高性能な計算資源を最大サイズで1日動かし続けると、1日で約160万円かかる例もあります。 「とりあえず大きめ」で始めて、そのまま止めずに動かし続けることが、最も高くつく使い方です。

3. 誰も見ていないダッシュボードが、裏で動き続ける
ある小売企業では、ダッシュボードへの無駄なアクセスが計算の費用を押し上げていました。 計算資源のサイズを見直し、契約プランやバックアップの保持期間(31日から7日へ)を整理した結果、 画面の表示時間は半分に、月額費用は4割下がりました。

4. 初期設定と「監視の対象外」に気づかない
アプリの自動停止が初期設定では無効になっていたり、バックグラウンドで動く処理が使用量の上限監視の対象外だったりすることがあります。 上限を設定したつもりでも、そこから漏れている費用がないかを確認しておく必要があります。

5. AIの利用料が、気づかないうちに膨らむ
海外の大手企業では、年間のAI予算を3〜4か月で使い切った例も報じられています。 AIは、質問の長さや参照するデータの量によって費用が変わり、使う人が増えるほど一気に伸びます。 「AIは無料ではない」という前提で、最初から利用量を測る仕組みが必要です。

想定外コストを防ぐ6つの対策

  • 予算の上限とアラートを、最初の日に設定する:会社全体だけでなく、部門・用途・利用者ごとに上限を決める。ある物流会社は、1ユーザーあたり1日の利用量に上限を設けています
  • 誰が何に使ったかを見える化する:処理に部門や用途のタグを付け、費用を後から集計できるようにする
  • サイズは小さく始め、必ず自動停止させる:遅ければ上げる。使っていない時間は止める。この順番を守る
  • 重い処理は、書き方をレビューする:1件ずつの処理や、全件の読み直しを避ける。費用の大きい処理の上位から見直す
  • 使っていないものを定期的に棚卸しする:見られていないダッシュボード、重複したデータのコピー、長すぎる保持期間を減らす
  • AIは用途ごとに上限を決め、モデルを使い分ける:簡単な要約や分類には安価なモデルを使い、利用者ごとの上限を設定する

コストは「削る」より「価値で測る」

注意したいのは、コストが増えること自体は悪いことではない、という点です。 ある製造業の会社では、社員向けの研修を行った後、データ基盤の利用量が全社で約2倍、受講者の部門では約3倍に増えました。 使われるようになれば、費用は増えます。それは活用が進んだ証拠でもあります。

大切なのは、費用だけを見て絞り込むことではなく、「その費用で、どれだけの価値が出ているか」を測ることです。 作業時間が何時間減ったのか、どの判断が速くなったのか。 費用と成果を並べて見られるようにしておけば、増やすべき投資と、削るべき無駄を見分けられます。

まとめ:始める前に確認したい5つのこと

  • 予算の上限とアラートを、部門・用途・利用者の単位で設定しているか
  • 上限の監視から漏れている処理や、自動停止しない設定がないか
  • 費用の大きい処理を、定期的に見直す担当者がいるか
  • 使われていないダッシュボードやデータを棚卸ししているか
  • 費用と、それによって得られた成果を並べて見られるか

従量課金のクラウドは、うまく使えば、必要な分だけ払う最も合理的な仕組みです。 想定外のコストの多くは、仕組みではなく使い方から生まれます。 上限を決め、見える化し、作り方を直す。この3つを最初から組み込んでおくことをおすすめします。

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CEO・PM / 代表取締役

古川 舜也Shunya Furukawa

京都大学大学院卒業後、フューチャーアーキテクト、Dirbato にてITコンサルタントとして 大規模基幹システムの構築・CRM/SFA案件に従事。2023年に株式会社PartnerOptimize を設立。

AIと業務設計で 事業を再構築する。

AI活用の進め方の整理から、データ基盤・AIエージェントの構築まで。
構想段階のご相談も歓迎です。お気軽にお問い合わせください。